サトウキビ畑を一望できる展望台やグレイスラムなど、「風のマジム」に登場するスポットを実際に巡ってみました。
グレイス・ラム(旧南大東空港跡地)
小説『風のマジム』の中で、最も印象的な場所のひとつが、南大東島でつくられるラム酒「グレイス・ラム」の事務所兼工場ですよね。南大東島に行くからには、ぜひ行きたいと思っていた場所です!
実際に訪れてみると、そこは驚くほど静かな場所にありました。なんと、かつての空港跡地に建てられた蒸留所なのです。建物の看板にも南大東空港のサインがはっきりと残っていました。

店舗前には、ラム酒の作り方の写真もあります。ちょっと古いけど、わかりやすくていいですね。

工場は残念ながら見学することはできませんでした。事務所兼店舗に行ってみると、そこにいたのは工場長!色々とラム酒のこととかお話ししてみたかったのですが、残念ながらあまりお話しすることはできませんでした・・・。今度行った時は、工場見学できたらいいな。
事務所兼店舗では、実際にお酒の試飲も可能です。ラム酒以外にもラム酒で作ったケーキ屋や南大東島の地図が掲載されたグレイスラムオリジナルTシャツなども販売しています。
小説では、主人公たちが「島のラム酒づくり」に挑む姿が描かれます。そのラム酒の工場が空港跡地ってなんか素敵ですよね。これからチャレンジしていく“始まり”を象徴するように感じられ、旅の1か所目にぴったりの場所だと思います。島内の売店や空港などあちこちにグレイスラムの商品は販売されていました。でもせっかく島に行くなら、実際の場所に行ってみたいですよね。店舗兼オフィスには、事前に電話連絡してから訪れるのをおすすめします。
日の丸展望台|島全体を見渡す絶景
島を見渡せる場所──物語の中でも、高台から島を見下ろすシーンがあります。
それを思い起こさせてくれるのが、この「日の丸展望台」です。展望台は島のほぼ中央部に位置し、360度広がるサトウキビ畑とその向こうの海までを見晴らすことができます。展望台から見て感じたことは見渡す限りのサトウキビ畑、それに1つ1つの畑が大きいこと!沖縄本島や沖縄の離島でもあちこちでサトウキビ畑はありますが、こんな大きな畑って見たことない・・・。

それもそのはず。調べてみると、南大東島のサトウキビ栽培面積は約4,150ヘクタールで島全体での農業可能面積の約9割を占めており、さらにサトウキビ農家1戸当たりの収穫面積は約5ヘクタール(沖縄県の平均は約1.1ヘクタール)!(独立行政法人農畜産業振興機構の記事https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002958.html参照)
東京ドームが約4.7 ヘクタールだから同じくらいの広さで1農家がサトウキビを育てている!そりゃ、大きく感じるわけですよね。
見渡す限りのサトウキビ畑。南大東島って本当にサトウキビの島なんだなーと実感できる風景でした。
シュガートレイン(ふるさと文化センター敷地内)
南大東島の歴史を語る上で欠かせないのが、「シュガートレイン」です。
島ではかつて、収穫したサトウキビを運ぶための運搬として機関車が走っていました。その実際の機関車が「ふるさと文化センター」の隣で実際に見ることができます。



1953年にトラック輸送に変わるまで、東西南北から製糖工場に向けて線路が張り巡らされていました。

ふるさと文化センター内では、当時の様子がわかる映像も自由に視聴することができます。それを見ると、今、シュガートレインが残っていたら、乗車して列車からの景色を楽しみたかったですねー!
文化センターにはこんな昔懐かしいポストもありました。

他にもその当時に使用されていた道具などが数多く展示されています。ぜひゆっくりとみながら、当時の島の様子に思いを馳せるいい機会になることでしょう。
シュガートレイン跡地|静かに残る島の記憶
実際に島内には、今もシュガートレインの線路跡が点在しています。
サトウキビ畑の中を通る道沿いなど、注意深く見ていると、ところどころにレールが残されている場所があるのです。


島の風景はとても静かで、観光地というよりも「生活の中にある歴史遺産」。整備されたスポットというより、車をゆっくり走らせると見つけることができますので、ゆっくり探すのもまた楽しい体験です。
【番外編】行きたかった、けれど行けなかった店たち
小説には、登場人物たちが通う食堂や居酒屋が登場します。
実際の島にもモデルになったとされる店がいくつかありますが、私が訪れたときは、残念ながら臨時休業中で立ち寄ることができませんでした。また訪れる機会があれば、今度はその店で、主人公たちと同じようにラムを傾けながら、島の夜を過ごしてみたい──。そう思える場所でした。
まとめ|“風のマジム”を感じながら旅する島
『風のマジム』という物語をきっかけに南大東島を訪れてみると、ページの中の出来事が現実として目の前に広がっていることに驚かされます。
登場人物が歩いた場所、見上げた景色、語り合った空間…それらは、確かに「この島」に存在しているのです。
小説に出てくるスポットを自分の足でたどってみる。
観光地をめぐるだけでなく、小説や映画のスポットをめぐる旅も、視点が変わってまた面白いなと思わせてくれ、今後の旅をするときの面白いきっかけになるなと新しい発見がありました。